「静謐」に込めた二文字

永年糖尿病と闘って、70代前半で亡くなった男性の奥様から、突然、一冊の手帳を広げて、「見てください。主人が最期に書いた様ですが、私には戸惑うだけで、途方に暮れて居ます」と困惑の表情が浮かんでいます。

 

病床でも饒舌に自分の人生観を話されて、私はその方からお話を伺うのが楽しみでした。

 

私にまで何時も自分にもしもの事が有ったらと生前中、残された家族や、一代で築き上げた事業など、遺された者が路頭に迷わない様にと案じていた方が残したのは、二文字の「静謐」だけだったとは、正直私も驚いた。

 

現在では馴染みの薄い言葉だけに、意味深い宿題を遺したのではと想いを巡らせていた。

 

生前から、社員を始め、家族も絶え間無く病室を訪ねていました。

恐らく、入院中の病室で、自分の肉声を通して、さり気なく伝えていたのではないでしょうか。

 

 

奥様に「静謐」から受け取った私の想いを素直にお話いたしました時、思い当たることがあったのでしょうか、涙を拭われました。