捨てられないもの

今のところ、就寝前の読書タイムが続いている。

 

今月、23日に芸術院新会員になられた、五木寛之著「捨てない生き方」がリクエストしていた図書館から今日25日に連絡があった。

 

「断捨離」好きで、「捨て魔」とまで言われている私は、編集者時代に、

五木先生とは数度、お目にかかる機会があり、先生の「捨てない」生き方に関心があった。

 

恐らく、一気に読んでしまうだろうなと予想通り、読み終えてしまった。

 

読み終えて、私にも「捨てられないの」がある。

 

一昨年前の脳外科の手術時に、現在も継続しているが、入院患者以外は、

家族でも病棟にも入れず、お見舞いも許可されない状態が続いている。

 

それ以前に、私は緊急入院で、しかも身内がいないために、何一つ持たずに、当時仕事をしている友人に、事情を話して、最低の入院生活に必要なものを、就寝時間近くに持ってきてくれた。

 

その友人は、気持ちが落ち込んでいると私を案じて、少しでも明るくなる様にと察して、酉年だからと言って、可愛い雛が並んでいるタオルを見せながら、「実はこれ、一寸使っているけれども、糊が落ちて、柔らかく使いやすいから」と、気遣いながら私に差し出した。

 

彼これ30年近く前であるが、未だに私は友人からの「一枚のタオル」だけは「捨てられない」のである。

 

五木先生は、その時その時の人生には必ず、大切に「捨てない」でいるのは、「歴史」があるからだと著しているように受け取った。

 

読み終わった朝、「捨てられない一枚のタオル」を取り出し、既に、セピア色に変わって居るが、「タオル」としての感触は残っていた。