大きな如雨露

ここ近年というか、5年近く前か、あるいは東京オリパラが決定したころにまで遡る方が、正しいかと思うが、都心部に隣接、地の利もよいため、見慣れた町の表情がすっかり様変わりした。

 

ホテルと、近代的なマンションの建築ラッシュである。

どんどん、開発されて、全く、長年住んでいながら、すっかり変わってしまったモダンな建物に、まるで、知らない土地に踏み入れたほどである。

 

嘗ては、商業ビルが立ち並んでいたが、現在は、分譲マンションと賃貸マンションが林立している。

 

これまでと違い、若い夫婦がこども連れで歩いている風景をみかける。

その顕著さは、これまでは少なかった保育園の多さに驚くばかりである。

 

確かに、これだけ、集合住宅といわれるマンションが増えれば、子どもたちの保育園の利用者が多くなるということだ。

町に子どもたちの声が溢れ、明るく活気のある町になるのは、とてもうれしい限りである。

 

できる限り、子どもたちの声が聞こえる散歩コースを心がけている。

保育園の前で、数人の男児の園児が、水をたっぷり蓄えた大きな如雨露を抱えて門から、飛び出してきた。

 

保育士はビニール袋に、園児の名前が書かれた球根を持ちながら、プランターの前で名前を呼んでいる。

 

大きな如雨露を歯を喰いしばりながら、運んでいる水は弾みで、園児の靴に水が入ってしまっているが、気にもかけず、プランターまで水を運んでいる姿が微笑ましく、思わず立ち止まって園児の活躍ぶりを見ていた。

 

3人の男児の園児が水を施して、植えつけ易くなったプランターに、保育士に名前を呼ばれて、先ほどの男児の園児も一緒に、自分の名前の付いたビニール袋から、球根を取り出して、植えこんでいる。

 

植えつけた球根の後ろに自分の名前札を差し込んでいる。

見ていると、ひとりの園児が、植えつけた球根と名札を、手に泥が付くのも気にしないで、周囲を叩いて固めている。

 

見ていると、プランターの前で一列に並んだ園児たちが、揃って同じ振る舞いをしている。

 

植え終わった園児たちの満足した表情に、私は、カサカサ乾燥しきった心に、潤いを取り戻したひと時である。