一粒の杏に寄せる思い出

昼時に友人が、バックからそっと、2粒の目の覚めるような、オレンジ色に彩られた、杏の実を取り出した。

 

「懐かしいでしょ、今年は、鳥に燕られずに、こんなに立派に育って、今日、持ち主の方から、近所の人に一粒ずつ、頂いたから、あなたには」。

 

世代が変わった現在その「杏」の歴史を知らないでいたが、私の友人は、見事に実った「杏」の経緯を知っていた。

 

友人は、「もう一つ、杏を分けてほしい」と申し出た処、快く分けて頂いた一粒を持って、私の自宅に届けてくれたのである。

 

実は、凡そ、30数年前に、自宅で鉢植えで育てていた杏が、大きくなり、その時にちょうど、新築中のお庭に引っ越しをお願いしたところ、喜んで

受け取って頂いたのである。

 

鉢植えの杏の木は大きく見えたが、いざ、広い庭では小さく、私は杏の花の季節になると、杏の木の成長が気になっていた。

 

案じていたより、立派に育ち、今年は特に桜の花と見間違うほどの、多くのピンク色の花をつけた。

 

現在、スーパーには梅の実が大小、並んでいるのを見ながら、急に「杏」の実も、そろそろ、熟している頃ではと、想いを馳せていた。

 

正に、グッドタイミングで、懐かしい「杏」の実が届いた次第である。

昨年は、鳥の被害に収穫がなかったそうだが、今年は見事に鳥の影響を受けなかったそうだと友人から聞いた。

 

私にとっては、久しぶりに帰ってきた「我が子」のように思えた。

 

そういえば、ふるさとの庭には、白い花をつけた「山桜桃」も、確か

この季節だったと、思いだした。

 

処で、「桃栗3年・柿8年」というが「杏」は何年だろうか。