2月8日の朝刊

最近、新聞の死亡欄を見るのがとても怖く辛い。
現役時代は、人事異動が欠かせない習慣というか、日課になっていた。
今は、まるで几帳面に平成の年号に区切りをつけるかの様に亡くなる方が多い。

何時もの様に、6時に朝刊を広げた時、死亡欄に日本画家の堀文子先生の死を報じた記事が目に入った。
私が思い切って、1979年から銀座で小さな小さな画廊の準備していた。
父親の友人の日本画の画商さんから、堀文子先生を紹介して戴いた。

未だ画廊は工事中だったが、大磯の堀文子先生をお訪ねした。
応接間に通されて、間も無く先生が「いらっしゃい」と、穏やかな笑顔で迎えて下さった。

「今日は貴女が画商さんになるお祝いをしましょう」と。
私には未だ先生の好意を理解してなかった。
気がつくと、テーブルに赤ワインとグラスが用意されていたのである。
思いがけない状況に、驚いている私のグラスにワインを注いで「乾杯、おめでとう」と。

お暇の挨拶をする私に、「私はね、学生に絵を描こうとしている時は、先ず花や草木などの対象物をしっかり見つめることが大切と言っているけれども、なかなかそれが出来ないのね」
「命あるものをよく見つめるということを言い続けているのよ」

かれこれ40年前の時を経て、堀文子先生が私に何を伝えたかったのか、この歳になって心当たりがある。
堀文子先生の含蓄のある深い想いを大切に、心に納めておきたいと今感謝を込めて思っている。