椿の絵手紙

今、寒椿があちらこちらで見かける季節です。

美術の仕事を始めて間もなく、椿をテーマに描く画家から伺ったことを思い出します。
かつては「松竹梅」でなく、「松竹椿」と言われていたそうです。
病気の方には、椿の花は忌み嫌われています。
花がポロリと落ちることから、縁起を担いでのことではないでしょうか。
ホスピスに入院中の方が、毎日、数枚の絵手紙を病院内のポストに投函することを日課にしていました。
これまでお世話になった方に、絵手紙をお礼のつもりで始めたところ、楽しさを見出したとのことです。
ある日、これまでに椿の花を描いていないので、ちょうど今、季節だから、できたら想像でなく、ナマの椿を持ってきてほしいとの依頼を受けました。
さすがに、瞬時に返事はできませんでしたが、理由を聞くと、だんだん描くことも辛くなってきたので、自分としては、潔さを椿の花に託したいとのことです。
その方の想いを察し、私は、かつての画家から聞いた話をしました。
その方は、書き上げた絵手紙に「松竹椿」と添えてありました。