赤の絵の具

仕事で目的地まで住宅街を歩いていると、さすがに郊外は額がヒリヒリするほどの陽射しです。
その途中で、鮮やかに咲き誇っている赤い薔薇が目を止めるのと同時に、あることが頭をよぎりました。
阪神淡路大震災の翌年の1996年5月14日は、長年パリ在住の国際的にも評価された洋画家でもあり、版画家の菅井汲氏のなくなった日であったことを、強烈なまでの赤い薔薇に重ね思い出したのです。
1958年に公開されたフランソワーズ・サガン原作の「悲しみよこんにちは」の映画の冒頭シーンのギャラリーの作品がバックに映し出されるのです。その映画はモノクロームと記憶していますが、その後、仕事で菅井氏に壁画の製作を依頼する幸運が舞い込んできました。
当時はまだパリにいらしたのですが。壁画の製作の打ち合わせで、赤の絵の具の使用に際しては、イギリスのラウニーの赤との希望であり、指定でした。出来上がった作品の赤は、住宅地の赤い薔薇に近く、しかも今日が命日というのは偶然でしょうか。